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日本のセールスチームに貢献するには?

7月初旬のある日、APMPカンファレンスでお会いした方からメールをいただきました。

メールの主はマイクロソフトのプロポーザル・センター・オブ・エクセレンス・チームのディレクターの方でした。私がAPMP日本支部を立ち上げた話に感銘を受けたことに加え、「外国人の視点から営業チームをサポートするにはどうしたらよいか」「外国人が営業チームを文化的にもビジネス的にもどのようにサポートすべきか」と悩みを抱える、日本を支援する2人のプロポーザル・プロフェッショナルにアドバイスをしてほしいとご依頼をいただきました。

そこで、日本、アメリカ、オーストラリアの3カ国に住んでいる方々の時間帯を考慮し、お互いに苦にならない時間帯である朝8時にオンラインミーティングを開催し、意見交換を行いました。せっかくなので、APMP日本支部の幹事メンバーでもある日本マイクロソフトの田中さんにも参加していただきました。

皆さん、早朝、あるいは夜遅くまで、勤務時間外にもかかわらず、熱心ですよね。

さて、彼女たちの悩みに触れる前に、まず彼女たちがどのような仕事をしているのかを紹介しましょう。

シニア・プロポーザル・マネージャーとグローバル・ビッド・マネージャーである彼女たちの仕事は、提案に特化した専門知識をもとに、営業チームが限られた時間とリソースの中でより多くの受注を獲得できるように支援することです。

彼女たちが直接顧客に会うことはほとんどありません。客観的な立場から、重要な意思決定者の心に響くベストプラクティスを活用した、生産性の高い提案書作成のための戦略策定のワークショップのファシリテーションを提供しています。

平たく言えば、多忙な営業や技術スタッフが本当に注力すべきことに力を注げるようにマネジメントする人です。営業とともに策定した戦略に基づき、社内の調整を行い、進捗を管理し、受注につながるようにサポートをします。その的確な支援により彼女たちは社内で信頼されるプロフェッショナルとして認知され、案件を獲得するためのアドバイザーとして頼りにされています。

ところが、日本チームをサポートする際は、他国にない違和感を感じたことがあったようです。日本の営業の主要メンバーとワークショップをデザインしていた際に、歓迎されないのではないか、ベストプラクティスは不必要なものだと思われるのではないかと不安になることもあったようです。この違和感は、言葉の違いによるものなのか、習慣の違いによるものなのか。これがお悩みの中身でした。

彼女たちの違和感、私も、とってもよくわかります。私も、前職でこのサポートを始めたときに遭遇しました。

同じ言語を話す私でさえ同じ経験をしました。

ですので、この問題は、言葉の違いから生じているとは思いません。

提案検討の手順や役割を明文化する習慣がない日本では、プロポーザルマネジメントに馴染みがなく、価値が正しく認知されていません。そのため、

・お客様を知らない人に何がわかるの?

・製品も技術も知らない人を巻き込むのは人件費の無駄。

・企画書を書ける人だったら自分たちでできるから、サポートを受ける意味がないのでは?

残念ながら、日本においてよくある反応です。

諸外国ではうまくやっていけるのに、日本ではなじめないのは、それぞれの人がそれぞれのやり方で仕事をしているからではないでしょうか。

共通の手順がないため、専門家を巻き込むタイミングや、全員の専門性を活かす方法がわからないのです。

このような環境の中、私自身は、提案に携わる営業や技術スタッフが、全く認識されていないプロポーザルマネジメントの価値を理解し、行動を変えられるように工夫してきました。次のような私の経験を、アドバイスさせていただきました。

1. 営業チームが提案支援から得られる価値を理解してもらうこと

様々な業務が連携して成果を上げる営業チームにおいて、プロポーザルマネジメントがもたらす価値を、彼らが理解できる言葉で理解してもらえるよう努めましょう。日本の組織では、プロセスや手順、役割分担が諸外国に比べて標準化されていないことが多く、各個人の判断に任されているのが現状です。それが当たり前になっているので、標準化する、マネジメントすると言われても理解できない方が大半であることをあらかじめ理解しておきましょう。

2. 価値を証明する成功事例の共有

価値を自分の目で確かめてもらうには、やはり「こうすれば受注できる」ということを証明するのが一番です。そのためには、理解してくれる営業マンをサポートし、受注につながるサクセスストーリーを作る必要があります。成功事例を社内で共有し、自分もやってみようと、やる気にさせることを目指しましょう。

3. 経営陣を巻き込む

経営層がこの働き方の価値を理解したら、それを習慣化するためのトップダウンのサポートも必要です。また、トップダウンとボトムアップの両面から、働き方に対する意識や行動を変えていくことも重要です。

4. 根気と継続性

トップが良いと言っていても、他が成功していても、人の行動を変えるのは容易ではありません。相手の状況に合わせた支援や対話を粘り強く続けることも大切です。

さらに、プロポーザルマネージャーやビッドマネージャーは、提案に関わる人たちの仕事上のミッションやモチベーション、感情面も理解しておくことが大前提です。戦略会議を通じて、受注を勝ち取る最適解が、セールスチームが想定していたものと異なる結果となる場合があります。顧客課題や競争環境を精査した結果、提案するものや、提供体制が、当初想定したものと変わる場合があります。その変更により、当事者の利害が一致せず、コンフリクトを生じる可能性もあります。社内の利害は必ずしも一致しないことを肝に銘じて、適切なコミュニケーションを心がけることもアドバイスしました。

このように、お互いの経験を持ち寄って解決の糸口を見出そうとする意見交換は、終了予定時間を延長するほど盛り上がりました。

今後も、より多くの日本企業でプロポーザルマネジメントによる成功体験を創出し、その価値を知ってもらうことで、彼女たちの活躍を応援していきたいと思います。日本におけるプロポーザルトランスフォーメーションを推進してまいります。